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ぼくはきみのためにこそ歌う


映画『アンコール!!』予告編

(原題:Song for Marion、米公開時英題:Unfinished Song)

失敗や変化を恐れ、踏み出すことができないなんてこと、わたしにだってありますよ。心を縛る鎖は頑強で、発せられる臭気と噪音が尽きることはないのですから。奴は確実にわたしたちの魂を蝕んでゆきます。潰えた可能性、たくさんのなくしもの、落胆と憂鬱とリアルの混合物。ぶちあたれば、無傷ではすまない。ああ、こんなに辛いなら、いっそ逃げだしてしまおうか。苦悩。あるいは懊悩。けれども結局、わたしはそれらと対峙することを放棄できずにここまできました。わたしはわたし自身と、わたしが暮らすこの世界と向き合うことを、やめることができないままいままだ生きています。なぜって? 焔がまだ消えちゃいないからです。心の深いところ、深奥をほのかに照らすものが、わたしの中に、そのどこかで揺らめいているからです。今のわたしは、わたしを支えているものについてまったく言及できません。言語化できるだけのちからがない。けれども確かにそれはあって、そのことをふと思い出すのです。たとえば、優れた小説を読んだときに、優れた音楽を聴いたときに、そして、この映画を観たときに。『アンコール!!』は歌唱シーンで胸を打たれた数少ない作品のひとつです。