雑記帳

わたしのさくぶんおきば

掌篇 ♯1

 ぼくはかねてから小説家になりたいと考えている。かねてから、と書いたが、言葉の意味は知らない。それっぽいから使ってみただけだ。どこかでそんな文章を読んだ気がしたのだ。とにかくぼくは、小説家になりたいと考えている。だから小説を書く必要があるのだけれど、何を書いていいのかまったくわからない。いくら思考をめぐらせてもこれというものが浮かんでこない。才能がないのかもしれない。こういう場合、普通ならば書くための技術を学んだりするのだろうけど、それをやるとわざとらしい、退屈なつくりものが出来上がってしまうようでぼくは嫌だ。ぼくはあくまでぼくのオリジナリティを信じている。人まねなんかしたくないのである。これは作家として立派な姿勢ではないか。芸術家はみんなそういうものではないか。いや、お金は必要だ。お金は欲しい。だから死んでから認められるようなことはあってはならない。生きたまま評価されて、生きたまま金を受け取り、生きたままそれを使わなければ意味がない。なんのための人生だかわからない。なのでぼくは芸術未満の芸術、半芸術を志向して作品を書かねばならない。言いかえれば半商業主義。どちらに転ぶ気もないという意思の表明だ。しかしそうなると書くことが一層難しくなる。何を書けばいいのかさらにわからなくなる。キーボードを前に身体が固まってしまう。今みたいに。そしてなんとなくスマートフォンをいじりはじめる。最近はまとめサイトの巡回が日課だ。とても楽しい。焦る気持ちを抑えつつくだらないレスの応酬をなめるように読んでゆく。そして誤字や脱字に過剰反応する。なんだこの文章、ちゃんと書けよ。へたくそ。そうしてつつがなく一日を終える。つつがなくの意味は知っている。あれ、ちがう、そうじゃなくて。終えちゃダメなんだってば。ぼくは小説家になりたいんだから、小説を書く必要があるのだ。ぼくは今日もキーボードを前に呆然とする。いつか小説家になりたいな。そう考えながら。